教会音楽との出会い(続)

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教会音楽との出会い(続)

カテゴリー 折々の想い 公開 [2008/02/25/ 00:00]

グレゴリオ聖歌の四線楽譜

グレゴリオ聖歌の四線楽譜

わが生涯における教会音楽との出会いの旅の回想は何となく楽しい。今回もまた、その楽しい旅を続けよう。

4)1948年(昭和23年)4月、サンスルピス大神学院が福岡に開校し、わたしは神学科1年に編入された。ちなみに、今年は福岡大神学院の創立60周年に当たり、記念祭が予定されている。

さて、福岡大神学院ではグレゴリオ聖歌を中心とした正式の典礼生活との出会いがあった。

典礼生活において音楽は重要なパートを占める。従って司祭は典礼になじむと同時に典礼音楽にも通じていなければならない。そういう意味で、福岡大神学院時代は極めて重要な機会であった。その上、入学の年の12月になって、突然、オルガニストを務めるよう命じられた。それまでのオルガニストが神学院を去ったためである。正式なレッスンを受けたこともなく、興味本位に我流で身につけた技術ではどうしようもなかったが、仕方がない。カナダに移るまでの3年近くも未熟なオルガニストを務めた次第。

神学院における典礼生活の中心は主日の朝の歌唱ミサと午後の聖務日課の晩課が中心であった。いずれもグレゴリオ聖歌一辺倒で、その伴奏は決して楽ではなかった。周知の通り、グレゴリオ聖歌は独特の旋律であり、その流れるようなリズムにオルガンを合わせなければならない。そしてここにもう一つの出会い、すなわち、グレゴリオ聖歌の正式な伴奏譜との出会いがあった。それは、正調グレゴリアンで有名なソレム修道院など、グレゴリオ聖歌の本場フランスで発行された伴奏譜で、詳細は忘れたが、そこでわたしはグレゴリオ聖歌伴奏の極意を学んだような気になった。

それともう一つ、発見したことがある。グレゴリオ聖歌は通常四線譜に記されるが、四線譜だと音程を自由に上げ下げして演奏できることである。神学生たちの歌は、特に早朝は時々音程が下がることがある。そんなときは半音ないし一音ほど音程を簡単に下げて演奏することができた。五線譜だとそうは行かない。

 5)カナダ留学時代にはパイプオルガン(仏語では単にオルガン=l’Orgue)との出会いがあった。今でこそパイプオルガンなど珍しくないが、当時のわたしにとってその出会いは感動的でさえあった。モントリオール大神学院のチャペルはもちろん石造の立派な建物で、天井はカナディアンロッキーから切り出されたマツで見事に組まれていた。そして、四段の鍵盤を備えたかなり大きなパイプオルガンが後方の二階に取り付けてあった。オルガニストはクラスメイトのデジレ君で、バッハのフーガだってやすやすと弾きこなす名手であった。彼はフランス系アメリカ人(Franco-Americain)だが、小さい時からピアノを学んだという。母校の校友誌によれば先年亡くなったそうだ。今彼は天使たちの歌声に包まれているのだろうか。

パイプオルガンの音色は絶妙である。中でも石造の大聖堂をも揺るがすような低音の迫力は絶大である。わたしは院長の許しを得て誰もいないときにこのパイプオルガンを弾かせてもらっていたが、演奏するというよりは音を出して聞いているだけで感激したものだ。デジレ君の伴奏のもと、二百人を超える同僚の神学生たちと典礼に参加した日々は生涯忘れることができない。それに、モントリオール近郊にあるカザヴァンのパイプオルガン工場を見学したことも思い出。一流の音楽家たちが何千本という大小さまざまなパイプを調整している様や、パイプ組み立ての複雑な作業など興味深いものがあった。

カナダではもう一つの教会音楽との出会いがあった。ボーイ・ソプラノである。かつて福岡に来日して司牧や小神学校指導に当たっていたことのあるモントリオ-ル大司教、レジェー枢機卿の手によって助祭に叙階されたわたしは、由緒あるノートルダム大聖堂の日曜日のメインのミサに助祭として奉仕するため、同僚で副助祭のフィリオン君とともに半年あまり通った。そこでわたしは始めてボーイ・ソプラノの歌声を聴いたのである。当時は今と違い、まだ正式の聖歌隊に女性はいなかった。だから、それは伝統的な教会聖歌隊との出会いでもあった。同時に、神学校のチャペルとはまた違った大聖堂における歌唱ミサではパイプオルガンに支えられた大合唱にも圧倒された。腹の底から揺すぶられて、身も心も祈りになりきったような体験だった。(続く)



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