わが思いは平和の思い

わが思いは平和の思い

カテゴリー 折々の想い 公開 [2007/08/10/ 00:00]

記帳するヨハネ・パウロⅡ

記帳するヨハネ・パウロⅡ

前教皇ヨハネ・パウロ2世は1981年2月、教皇としては初めて日本を訪問されたが、25日、全日空特別機で東京から長崎に向かわれる途中広島に立ち寄り、吹雪の舞う平和公園における「平和アピール」、広島市公会堂における国連大学と広島市共催の「記念講演」、そして広島平和祈念聖堂訪問と精力的に日程をこなされた。平和アピールの後、教皇は原爆資料館を見学し、記帳台の前でしばし黙想してから、次のようにラテン語で記帳された(写真)。

  “Ego cogito cogitationes pacis et non afflictionis”

直訳すれば、「わたしが思うのは平和の思いであって災いの思いではない」となろう。この書き込みの後、いつものように「教皇ヨハネ・パウロ2世」と署名して記帳台を離れ、階段を下りかけて立ち止まり、記帳台に引き返して“dicit Dominus”と書き加えられた。「主は言われた」という意味で、先の言葉がご自分の言葉ではなく神のことばであることを明確にするためであった。

このすぐ後、教皇が記帳された神のことばを確認した同行記者団が騒ぎ出した。「この言葉の出典はどこだ」というわけである。ついに東京在住の聖書学者に聞いてはじめてあの言葉が旧約聖書エレミア29章11節であることが判明した。教皇が書いたラテン語の文章はかの有名な「ヴルガタ訳聖書」であることも明らかになった。現代の批判訳によれば、「思い」は「計画」になり、「平和」は「繁栄」とも訳されている。

しかし、本質的な意味は変わらない。人類に対する神の思い、すなわち人類のために神が立てた計画は平和と繁栄の計画であって、決して災いなどではないということである。天地創造を物語る創世記は記す。「神はご自身が造ったすべてのものを見られた。それははなはだよかった」(創1,31)。特に、神にかたどり、神に似せて造られた人間は神の最高の傑作であった。こうして神は人を男と女に造り、祝福して言われた。「生めよ、ふえよ、地に満ちよ、そして地を従わせよ」(1,28)。まさに平和と繁栄のご計画である。

ではなぜこの世に戦争や原爆などの災厄が存在するのだろうか。災厄は神から来るはずがないとすれば、それは神の敵、悪魔からか、あるいは人間自体からに違いない。創世記は人類最初の罪、原罪について語り、この原罪によって人の世に苦しみ、情欲の乱れ、不毛な生、そして死が入ったと語る(創世記3,15-18参照)。さらに聖書は、原罪は「もっとも賢い蛇」(悪魔のかたどり)の誘惑によるとされる(創世記3,1-7参照)。原罪に加えて、人間はさまざまに自罪を犯して世の中の混乱はさらに増していく。「この地は神の前に堕落し、不法に満ちていた」(創世記6,11)。

要するに、広島や長崎の原爆の被害を始め、すべての戦争の災禍もまた「人間の仕業」(ヨハネ・パウロ2世の平和アピール冒頭の言葉)であり、人間の罪の結果に他ならない。従って、人間が悔い改めて神に立ち帰り、神の法に従ってすべてを行えば戦争を防止し、世界平和を築くことができる。教皇は平和アピールの中で強調される。「戦争という人間が作り出す災害の前で、戦争は不可避なものでも必然でもないということを、われわれは自らに言い聞かせ、繰り返し考えてゆかねばなりません。人類は、自己破壊という運命のもとにあるのではありません」。

事実、平和の神は御独り子を世に遣わし、その十字架の死と栄光の復活を通して平和への道を開いてくださった。新約聖書は証言する。「イエズスは、散らばっている神の子らを一つに集めるために死ぬ」(ヨハネ11,52)。聖パウロも証言する。「実に、キリストご自身こそ、わたしたちの平和であり、互いに離れていた二つのものを一つにしたかたです。キリストは、ご自身の体によって、人を隔てていた壁、すなわち、敵意を取り除き、二つのものをご自分に結びつけることによって、一人の新しい人に造り上げ、平和を実現しました」(エフェゾ2、12-15)。

こうして、預言者エレミアの言葉はキリストにおいて成就した。聖パウロは言う。「神は、ご意思に秘められた神秘(神の思い)を悟らせてくださいました。キリストにおいて実現されるようにと、あらかじめ計画しておられたその神秘とは、天にあるもの、地にあるもの、すべてのものを、キリストを頭として一つに結び合わせるということです」(エフェゾ1、9-10)。



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