教皇の「世界平和の日」メッセージから

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教皇の「世界平和の日」メッセージから

カテゴリー カトリック時評 公開 [2012/01/15/ 00:00]

毎年1月1日はカトリック教会が定めた「世界平和の日」である。この日、教皇ベネディクト16世は恒例の平和メッセージを公表した。それによれば、教皇は「若者の正義と平和の教育」を強調し奨励している。

教皇のメッセージを理解するには本文を読むのが一番であるが(日本語訳は“カトリック中央協議会”のHPに全文掲載されている)、参考のために、メッセージを読んだわたしの感想を短くまとめておきたいと思う。

まず、メッセージは「正義と平和」と表現しているが、これは、第2バチカン公会議の「平和は正義のわざ」(現代世界憲章78)を想起させる。ここで正義とは、人間の基本的人権を擁護し実現することであるが、教皇は「共通善」という表現を使っている。共通善とは人間が「人間らしく生きるために必要な諸条件の総体」(同上74)である。このような正義の基準は人間の尊厳に関する真理から来なければならない。つまり、神の似姿として造られ、神の養子としてそのいのちにあずかるよう召されたという、超越的な人格の尊厳に見合う正義でなければならないということである。そして、このような真理と正義に基づく平和を実現することは至難の業であり、兄弟のために命を捨てるほどの愛に動機づけられなければならない。「平和の建設のために必要欠くべからざるもの」は愛であり、「平和は愛の実りでもある」(同上78)と言われるゆえんである。さらに、平和の建設においては自由が大切にされなければならない。自由は平和の条件かつ目的である。もちろん、ここにいう自由とは単なる放縦ではなく、利己的な欲望の充足でもなく、真理に従って生きる神の子の自由である。

以上、「神が定めた秩序」を前提にした「真理・正義・愛・自由」の四概念は、教皇ヨハネ23世(在位1958-63)の不朽の回勅『地上の平和』以来、平和を語る場合のキーワードとなっているが、今回のメッセージでも教皇はこれらの諸点をしっかり踏まえて説いておられる。そのうえで、真の平和について、教皇は『カトリック教会のカテキズム』をそのまま引用される。「人間のいのちの尊厳や成長のためには平和が必要です。平和とは単に戦争がないいということだけではなく、また敵対者間の力の均衡を図るということだけでもありません。地上で平和が得られるのは、各個人の善益の擁護、人間相互の自由な交流、個々人ならびに諸民族の尊厳の尊重、兄弟愛の熱心な実践があってのことです。平和は秩序の静けさです。それは正義が造り出すものであり、愛の結果なのです」(n.2304。

次に、青少年の正義と平和教育を強調する理由については、「熱意と理想を抱く若者が世に新たな希望を与えることができると確信するからです」と、若者への信頼と期待を表明している。「若者に対する正義と平和の教育」の場については、「第一の場は家庭です」と述べ、その理由として、「両親は最初の教育者」(first educators)であり、「家庭は社会の原細胞」(primary cell)だからである述べている。両親の愛と模範、そして厳格なしつけに基づく家庭団欒において、子供の生涯を左右する人格の基礎的形成が行われると同時に、責任ある社会人としての必要な徳性が養われるのである。

メッセージは正義と平和教育の第二の場として学校をあげ、教師に勧告して、「若者がおのおの自分の召命を見いだし、神が与えてくださった賜物を成長させる助けとなるよう心がけてください。子どもが良心と宗教的原則に沿った教育を受けることができることを、その家族に保障してください」と述べている。そして両親には、学校選択の自由(権利)と責任があることにも言及しておられる。

さらに教皇は、政治指導者の責任について、「政治指導者にお願いします。家庭と教育機関が、自らの教育の権利と義務を行使することを具体的な形で支援してください」と注文をつけている。

教皇はまたマスメディアにも注文をつけて言う。「現代社会においてマスメディアは特別な役割を持っています。マスメディアは情報を伝えるだけでなく、視聴者の精神を形成します。それゆえ、マスメディアは若者の教育に著しく貢献することが可能です」と。

最後に、教皇は、「正義と平和」の理念、モデル、そして力の源泉はキリストであることを指摘して言われる。「イエス・キリストご自身が、正義と平和です」。まさにキリストの平和こそ、地上の平和の原点であると同時にその頂点でもある。なぜなら、「キリストはわたしたちの平和」(エフェゾ2,14)だからである。



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