キリスト教と諸宗教

キリスト教と諸宗教

カテゴリー 折々の想い 公開 [2007/07/11/ 00:00]

鹿児島カテドラル

鹿児島カテドラル

第2次世界大戦後、特にヨーロッパでは、人生における宗教の重要性と人々や諸文化間の出会いの増加に従って、宗教間の対話が不可欠になってきた(もちろんわが国においては、ザビエル渡来のときからすでに神道や仏教との接触や対話は当然始まっていた)。その結果、教会は第2バチカン公会議において諸宗教との対話を福音宣教の重要な課題の一つとした。ただ、この対話が実を結ぶためには、カトリック教会は諸宗教をどのように評価するかを明らかにする必要が生じた。こうして生まれたのがいわゆる「諸宗教の神学」である。

この新しい神学部門である「諸宗教の神学」にわたしがはじめて接したのはちょうど10年前のことであった。教会の活動に関する文献を主に扱うフランス語の雑誌「La Documentation Catholique」(カトリック資料集)の1997年4月6日、2157号に「キリスト教と諸宗教」と題する論文を見つけたのである。この文献は、国際神学委員会が、当時、この委員会の会長を務めていた教理省長官ラッチンガー枢機卿(現教皇ベネディクト16世)の了解を得て公表された論文で、諸宗教神学の現状とその基本原則をまとめたもので、権威のある資料である。残念ながら、拙訳でB5版42ページ、5万7千語に及ぶこの論文をここで詳しく紹介できないから、さわりの部分のみを参考のために記してみよう。

諸宗教の神学の根本的な問いは、「諸宗教はその信奉者たちにとって救いの仲介となりうるか」である。換言すれば、キリスト教以外のそれぞれの宗教に「救済的価値」があるか否かを問うことである。この問いに対する神学的な答えは、通常、次の三つの態度に要約されている。

1-「排他主義」と呼ばれる「教会中心主義」

これは、洗礼を受けて教会に入らなければ救われないとする態度で、地上の教会に属していなくても救いが得られるというピオ12世をはじめ、第2バチカン公会議の教えによって無効とされた。

2-「包括主義」と呼ばれる「キリスト中心主義」

これは、イエス・キリストによる救いの唯一性と普遍性を主張するもので、救われる者は、教会内であれ、教会外であれ、すべてキリストの仲介によるとする。これが教会の採っている態度で、これは神学者たちの共通意見でもある。

3-「多元主義」と呼ばれる「神中心主義」

これは、正当で真の救済的仲介の多元性を認めるもので、事実上、キリスト教以外の諸宗教自体にも救いを仲介する力があるとする説である。この主張は、諸宗教との対等な対話を可能にするために必要だとして、これを研究する神学者も少なくないが、しかし、そのためにはキリスト教の本質的な教えを放棄する必要があるので認め難い。

そういうわけで、諸宗教との対話を進めるためには、まず、キリスト教自体の教えを正しく見直すことから始めなければならない。従って、御父の救済的主導権、キリストの普遍的仲介、聖霊の賜物の普遍性、そして、救いの普遍的秘跡としての教会の役割を確認することが、諸宗教神学の前提かつ第一の課題となる。第二の課題は、キリスト教以外の諸宗教において、どのような救済的価値があるかを明らかにすることである。つまり、すべての宗教がキリストによる普遍的救済に方向付けられ、秩序付けられたものとして、どのような有効な役割を果たし得るか、そして実際に果たしているかをつまびらかにすることである。そのためには、相互の違いを認めた上で対話に臨まなければならない。違いがなければ、まず対話の意味はないということである。

そこで、結論として言えることは、諸宗教に対するカトリック教会の態度は「包括主義的キリスト中心主義」でなければならないということであって、この基本に立って諸宗教との対話を、祈りと友情とを持って進めることが教会の基本路線であると言うことができよう。

「(今日の時代的背景の中で)教会は、さまざまな文化や宗教の広大な世界の中で、『地の果てまで』(使徒行録1,8)十字架上に死んで復活されたキリストを証するよう呼ばれている。宗教間対話はキリスト教的召命にとって当然のことであり、救いの神秘の生きた聖伝のダイナミズムの中に組み込まれているのであって、教会はこの救いの神秘の普遍的秘跡である。宗教間対話はこの聖なる伝承の一行為である」(国際神学委員会論文『キリスト教と諸宗教』の結論から)。



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