聖職者の苗床―神学校は「教区の心臓」

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聖職者の苗床―神学校は「教区の心臓」

カテゴリー 折々の想い 公開 [2009/09/11/ 00:00]

福音伝道者の苗床の表紙

福音伝道者の苗床の表紙

この9月14日、わたしは司祭叙階57周年を迎える。司祭職を目指してわたしが小神学校に入学したのは、太平洋戦争が始まった昭和16年(1941)の春だった。国宝大浦天主堂の傍にある1875年(明治8年)建立の、木造四階建ての由緒ある神学校である。司祭年である今年の司祭叙階記念日を迎えるにあたって、懐かしの母校を思い出している。

現在は「長崎カトリック神学院」となっている神学校は、あの頃は、「長崎公教神学校」だった。その詳しい由来は故中島政利神父著『福音伝道者の苗床―長崎公教神学校史』(聖母の騎士社・1977)(写真)にまとめられているが、その創立は大浦天主堂の竣工と信徒発見が行われた1865年(慶応元年)にさかのぼる。中島師は書いている。

――慶応元年(1865)3月17日、真に特筆、記念すべき出来事が起こった。プチジャン神父が、長崎の大浦天主堂で、17世紀の古い信徒の子孫を発見したのである。

プチジャン神父と同僚のローカニュ神父は、信徒発見の翌日、邦人神父養成のことを夢見ていた。それは、外国宣教会(筆者注・プチジャン神父らはパリ外国宣教会に属していた)の主要な目的でもあったからである。けれども、その計画は、非常な危険を伴うものであった(筆者注・当時はキリシタン禁制下にあった)。

ところで、人目につかぬ隠れ家を造ってはいかがでしょう、とローカニュ神父が提案した。計画は、即座に実施された。ローカニュ神父は、宣教師たちが住んでいる司祭館の屋根裏を利用して、かなりの広い場所を整え、そこに、数人の少年たちを選んで住まわせ、彼らにキリスト教の教理とラテン語を教えることにした。

かようにして、選ばれた少年たちは、才能があって、しかも勉強意欲の強い、浦上の高木慶三郎と源太郎の兄弟、それに、五島の下村与作の3人で、共に最初の神学生となった。

この隠れ家は、布教の都合で宿泊しなければならない客人宣教師のためにも、夜となく昼となく解放された。そして、これを使用し始めたのは、慶応元年(1865)12月8日、聖母無原罪の祝日の8日間中であったので、「無原罪の御孕りの間」と命名した。

これが、長崎神学校の創立であり、また、無原罪の聖母を守護の聖人として仰ぐようになった経緯である。――

この記事を見てもわかるように、長崎の神学校は信徒発見のその年に創立されたのであり、教会が、そして布教の最先端を受け持つ宣教会が、邦人司祭の養成をいかに重要かつ緊急の任務と心得ていたかを示している。この事実は、わが鹿児島教区でも例外ではなかった。すなわち、鹿児島教区が設置された1927年(昭和2年)に、鹿児島教区長館に小神学校が併設されたのである。もっとも、この神学校は一年後には福岡の神学校に合併されたが、その時の神学生のなかには、後の那覇司教石神真真郎師やレデンプトール会の故有馬信茂師がいる。

ここで、「神学校」という呼び名に注目したい。中島師は上記著書の「まえがき」の中で次のように述べている。

――Seminarium Clericorum(聖職者たちの苗床)を神学校と呼んでいる――

周知のとおり、通常は単にSeminariumと呼び、わが国では「神学校」または「神学院」と訳して使用している。

これに加えて、第2バチカン公会議は神学校のことを「教区の心臓」と呼んでいることに注目しておこう。公会議は言う。

「司教は神学校に働く人々を愛のこもった心づかいをもって絶えず激励し、神学生に対してはキリストにおける真の父として接しなければならない。さらにすべての司祭は神学校を教区の心臓と考え、それをこころよくたすけるようにしなければならない」(『司祭の養成に関する教令』5)。

つまり、教区司祭を養成する神学校は教区の将来を左右する重大事であるとの認識であり、これは司教司祭ばかりであなく、信徒・修道者全体の、つまり教会共同体あげての重大関心事でなければならないことを意味しよう。

なお、現在、小神学院も大神学院も、多教区間の協力によって運営されていることは周知の通りである。



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