活躍するカトリック信徒たち
カテゴリー 折々の想い 公開 [2010/01/25/ 00:00]
千葉茂樹さんと言えばマザー・テレサの映画製作ですでに知られているが、今回はその3作目となる「マザー・テレサと生きる」を披露するという。朝日新聞1月7日朝刊の「ひと」欄の記事を見てみよう。
「マザー・テレサ生誕100年に合わせて制作した映画「マザー・テレサと生きる」が、16日から2月14日まで記念映画祭(東京都写真美術館ホール)で上映される。
1979年のノーベル平和賞受賞の前から彼女を追い続けてきた。3本目の映画となる今回は、労働者の街、東京・山谷が舞台。81年に来日したマザーはここに「豊かな日本の中の貧困」を見た。映画はその遺志を継いで山谷で独り暮らしの老人をみとるホスピス経営者、隅田川河岸で炊き出しをする人々に寄り添う。インドでマザーが開いた貧困者のホスピスに、医学生を研修に連れて行く鹿児島の医師も紹介する」
次に、千葉さんの言葉を紹介している。「没後13年になる彼女の生き様が宗教を超えて日本に何を残したか伝えたかった。日本全体に閉塞感が広がる中、マザーを過去の人物ではなく、今も生き続ける指針にしたい」。まったく同感である。マザーの精神と行動はいつまでもわたしたちの手本としなければならないわけだ。新聞記事は最後に千葉さんの洗礼について紹介している。
「マザーに会ったのをきっかけに44歳でカトリック信者になった。「人の道」を説く映画を作り続けるのは、自分には決して出来ない生き方にあこがれるからでしょうね」
一方、国際協力機構理事長の緒方貞子さんについては特に紹介するまでもなく有名であるが、こちらも朝日新聞1月4日付の記事、「対中援助」に関するインタビュー記事が掲載された。その中で、次のような問答に注目したい。
――30年にわたって援助してきた中国は近く、国内総生産(GDP)で日本を抜き、「世界2位の経済大国」となります。
「世界2位とか3位とか、かけっこじゃないのだから、私たちはそんな看板のために生きているのではない。ばかばかしい。今の世界はネットワークの時代だ。各国が持ちつ持たれつ動いている。軍事力で立たないことを決めた日本は人的、文化的な貢献にさらに力を入れるべきだ」
わたしはこの歯切れのよい言葉が大いに気に入った。第一に、多くのメディアが指摘するところの、経済大国世界第2位の日本が中国に抜かれる、という心配を「ばかばかしい」と切り捨てるところがなんとも痛快だ。経済大国とは世界の富を独占している様を言うのだろう。とすれば、多くの途上国を犠牲にし、貧しい人々を搾取していることを意味しよう。そんな経済大国論をナンセンスと切り捨てるところは、まさに世界の富は奪い合うものではなく、分かち合うべきものとするキリスト教的価値観を強調した言葉に違いないのである。
さらに、「今の世界はネットワークに時代だ」という指摘も素晴らしい。グローバル化した世界は今や一つであり、国益という国家エゴを克服して、人類全体が一体化して助け合う時代であるという緒方さんの指摘は当を得ている。加えて、「人的、文化的な貢献にさらに力を入れるべきだ」という指摘もまた、傾聴すべき意見である。これからの日本は、経済大国であることを誇りとするのではなく、エコノミック・アニマルから神の似姿である人間の顔を取り戻しつつ、人道的かつ平和的な民生支援に力点を置いた国際貢献の道を進まなければならない。そうした姿勢を打ち出す緒方さんの信念の背景に、キリスト教的な普遍的価値観の重要性の主張が隠されていないと誰が言えよう。