第四の願い “日ごとの糧を今日もお与えください”

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第四の願い “日ごとの糧を今日もお与えください”

カテゴリー 折々の想い 公開 [2010/09/10/ 00:00]

いのちの糧・聖体拝領

いのちの糧・聖体拝領

いよいよ話は「主の祈り」の後半にさしかかった。毎日幾度となく繰り返し祈っている「主の祈り」ではあるが、こうしてあらためて取りあげてみると、実に様々な感慨が湧いてくる。先日も、あるシスターがたの黙想会のお手伝いをしながら、そう感じた。

今回取り上げる願いは、「わたしたちの日ごとの糧を今日もお与えください」である。始めから数えて四番目の願い、後半の四つの願いの第一の願いであるが、前半が神ご自身のための願いであったのに対して、後半は「わたしたち」のための願いであることにまず注目したい。そしてこの「わたしたち」は、神を父と呼んで祈る「キリスト者共同体」を意味すると同時に、本質的に同じ人間性をもつ「人類全体」を意味する。民族だとか、国家だとか、違いばかりを考えてものをいう人々も多いが、キリスト者は民族や宗教、そして国籍の違いを超えて共通の天の父に祈る。もともと人類は一つであり、唯一の起源と目的を共有しているからである(諸宗教教令n.1参照)。

さて、「わたしたちの日ごとの糧を」とは、ラテン語では”panem nostrum quotidianum”(わたしたちの日ごとのパンを) となっており、このパンとは、わたしたちが人間らしく生きるために必要なあらゆる「物的かつ精神的な善」を象徴している。周知の通り、人間は皆、生きるためにこころとからだの糧を必要としている。そしてその糧は、人間にいのちを与えた天の父が必ず与えてくださるという信頼が、この第四の願いに込められている。キリストは言われた。「天の父は、悪人の上にも善人の上にも太陽を上らせ、また、正しい者の上にも正しくない者の上にも雨を降らせて下さる」(マタイ5,45)。

天の御父へのこの信頼の態度は、わたしたちが受動的になることへの勧めではなく、いのちとともにいのちに必要な「時機に応じた物的・霊的善をすべて与えてくださる神の摂理」(カテキズム2830参照)への協力の態度を意味している。事実、キリストはわたしたちに「まず神の国とその義を求めよ。そうすれば、必要なすべてのものが与えられるであろう」(マタイ6,30)と言われている。

従って、世界の飢餓という悲しい現実を前に祈るとき、「個人的な行動においても、人類家族との連帯という観点においても、自分たちの兄弟に対する実際的な責任ある行動をとるよう促される」(カテキズム2831)のである。「ねり粉の中のパン種のように、神の国の新しさが、キリストの霊によってこの世界を変革する力をもっているはずであるから、このことを、個人的・社会的・経済的・国際関係の中に正義を確立することによって表す必要がある」(カテキズム2832)。

しかし、この世に正義を確立するためには、「一つの糧」を「大勢で分かち合う」清貧の精神が必要である。カテキズムは、真福八端の最初にある「貧しい人は幸いである」(マタイ5,3)という「貧しさ」とは「分かち合いの徳」であると指摘し、「それは、ある人々の豊かさが他の人々の窮乏に役立つために、強制によってではなく、愛によって、物的・霊的善を共有し分かち合うようにという呼びかけである」(2933)。日本語訳には「共有し」が抜けているが、これは重要な一語であって、世界の富は人類共有の遺産であるから、この一つの遺産を人類全体で分かち合うのは当然であるとの意味がある。前述の「一つの糧」はこのことを意味しよう。今や独占的な金儲け主義からすべてを分かち合う友愛路線への転換が迫られている。

なお、主の祈りの第四の願いは、キリスト者にとってはもう一つの重要な意味がある。それは、人間の根源的な渇きをいやす「霊的な糧」への願いである。キリストは言われた。「わたしは天から降って来た生けるパンである。このパンを食べる人は永遠に生きる」(ヨハネ6,51)。すでに明らかなように、ここにいう「霊的な糧」とは、「永遠のいのちのパン」のことであって、「信仰のうちの受け入れる神の言葉と、聖体の秘跡のうちにいただくキリストのからだ」(カテキズム2835)である。わたしたちはこの「いのちのパン」をわたしたちキリスト者のためばかりであなく、人類全体のためにも祈るのである。そしてこの祈りは、御言葉の宣教に始まり、聖体祭儀(ミサ)を源泉とし頂点とする教会活動全体につながる願いでもある。



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