ローマ教皇とは

ローマ教皇とは

カテゴリー 折々の想い 公開 [2013/04/01/ 00:00]

新教皇フランシスコ

新教皇フランシスコ

教皇ベネディクト16世の辞任に従って教皇の交代が行われ、南米出身の新教皇フランシスコが選出された。そこで、ローマ教皇とはどんな存在なのか、第2バチカン公会議に基づいて編まれた新しい要理書を覗いてみよう。

『カトリック教会のカテキズム』は882番において、第2バチカン公会議を引用して次のように述べる。

「教皇(Le Pape)は、ローマの司教であり、ペトロの後継者であって、司教たち、および信者の群れを互いに一つに結ぶ、永久の見える一致の原理であり基礎である(教会憲章23)。事実、ローマ教皇は、キリストの代理者ならびに全教会の牧者としての任務の力によって、教会の上に常に自由に行使できる完全、最高、そして普遍的権能を有する(教会における司教の司牧任務に関する教令2,9参照)」。

まず、教皇は12使徒のかしら、聖ペトロの後継者である。イエス・キリストはその宣教活動の最初から弟子を集め、その中から12人を使徒と名付け、生活を共にして教え、ご自分の意思を伝えられた。そしてある時、「あなたはメシア、生ける神の子です」とイエスへの信仰を告白したシモンに言われた。 「シモン・バルヨナ、あなたは幸いだ。あなたにこのことを表したのは人間ではなく、わたしの天の父なのだ。わたしも言っておく。あなたはペトロ。わたしはこの岩の上にわたしの教会を建てる。黄泉の力もこれに対抗できない。わたしはあなたに天の国の鍵を授ける。あなたが地上でつなぐことは天上でもつながれ る。あなたが地上で解くことは天上でも解かれる」(マタイ16,16-19)。

キリストのこの言葉はペトロの首位権、すなわち教会における最高権を約束されたと 理解されてきた。そしてキリストは復活後、ペトロに現れ、他の使徒たちの前で、「あなたはわたしを愛しているか」と三度にわたって愛の告白を要求し、そして言われた。「わたしの羊を飼いなさい」(ヨハネ21,15-17)。これは、前に約束された首位権の授与であると理解されており、実際、ペトロはこの首位権を行使した。

ペトロはローマのバチカンの丘でローマの司教とし殉教することになり、ローマの司教の後継者がペトロの首位権を引き継ぐことになる。こうして2千年この方、ペトロの使命と権能は連綿と引き継がれ、ベネディクト16世は第265代目のローマの司教、ローマ教皇であった。

ところで、現代の教会は第2バチカン公会議を境にしてその様相を一変したことは周 知のとおりである。聖伝と聖書の原点に立ち返り、2千年の歴史的経験に基づいて教会自体を刷新し、併せて世界に開かれて福音宣教の使命を果たすべく、設定された16の公会議公文書の実現に向かって進む教会の頂点に立つ教皇の任務はいっそう重要かつ超多忙となっている。

公会議ころのカトリック人口は今や倍増して11億9600万人に達し、したがって 教会司牧もその機構とともに活動が増大し、キリスト教一致運動(エクメニズム)、ユダヤ教、イスラム教をはじめとして伝統的な諸宗教との対話、さらには、 現代人と喜びや悲しみを共にしながら進める社会の福音化のために、教皇は種々の対内的・対外的メッセージを絶えず発信し、教会内外の無数の要人との接見を こなし、世界各地を訪れる「空飛ぶ教皇」の異名を被るまでになった。

これだけではない。ローマ教皇にはもう一つの忘れてはならない顔がある。主権国家としてのバチカン市国の元首の顔である。バチカン市国は1929年、ラテラン条約によって成立した超ミニ国家で、0,44平方キロメートルの国民も軍隊も持たない国であるが、178カ国と外交関係をもつ「精神的大国」とも言われている。したがてって、バチカンを訪れる世界の国王や大統領、首相その他の要人は後を絶たず、教皇の影響力は全世界の国々に及んでいる。

最後に、教会の聖と俗について述べなければならない。教皇交代劇の中で、メディアは余りにも教会の俗を一方的に宣伝したからである。第2バチカン公会議 は、「教会は、人間的要素と神的要素とからなる複雑な一つの実在を形成している」と述べた後、「キリストは聖にして、罪なく、汚れなく、罪を知らず、ただ 人々の罪を償うためのみ来られたのであるが、教会は自分のふところに罪人を抱いているので、聖であると同時に常に清められるべきものであり、悔い改めと刷 新との努力を絶えず続けるのである」(教会憲章8)と述べている。そのような教会の先頭に立つ教皇の重責を思い、あらためて忠誠を誓うと同時に、その使命のために祈らなければならない。