第八戒(3)情報伝達と愛の掟

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第八戒(3)情報伝達と愛の掟

カテゴリー 折々の想い 公開 [2014/07/15/ 00:00]

情報の氾濫する現代社会において、兄弟愛の掟を守ることは極めて困難であると言わなければならないだろう。事実、興味本位の暴露記事や放送は日常茶飯事であり、ソーシャル・メディアの普及によって人の名誉が傷つける事件も後を絶たない。誠実に兄弟愛を生きることの責任は重大である。

『カトリック教会のカテキズム』は教える。

「真理を伝達する権利は無条件のものではない。各々の人間は兄弟愛という福音的な掟に生活を合致させなければならない。兄弟愛は、具体的な状況において、求める者に真実を明かすことが適切であるか否かを識別するよう要求する」(n.2488)。

「愛徳と真理の尊重とは一切の情報やコンミュニケ―ションの要求にいかに対応すべきかを指し示す。他者の幸せと安全、私的生活の尊重、そして共通善は、知られてはならない事柄について沈黙を守る十分な理由となる。躓きを避ける義務は、しばしば厳密な分別を要求する。知る権利のない者に真実を明かす義務は誰にもない(註1)」(n.2489)。

「ゆるしの秘跡の秘密は神聖なものであり、いかなる理由によってもこれを漏らすことはできない。“秘跡上の秘密は不可侵である。したがって、聴罪司祭は、ことば又は他のいかなる方法をもってしても、またいかなる理由に基づいてもゆるしの秘跡を受ける者を決して裏切ってはならない”(新教会法典983条(1)」(n.2490)。

「職業上の秘密――たとえば政治家、軍人、医者、法律家の持つ――や秘密を守る約束の内密の情報は守られなければならない。ただし、秘密を守ることが秘密を打ち明けた者や秘密を打ち明けられた人に、あるいは第三者に重大な損害を与え、真実を公表することだけがその損害を回避する唯一の道であるという場合は例外である。たとえ秘密を守る約束がない場合でも、他者に損害を与える恐れのある個人情報は、重大で相応の理由なしにはこれを公表してはならない」(n.2491)。

「各個人は人々の私的生活(プライバシー)に関して正しい留保を守らなければならない。コンミュニケ―ションの責任者は共通善の要求と個人の権利尊重との間の正しい調和を保つ義務がある。政治または公共の任務を担う人々の私的生活へのメディアの介入は、彼らの私事や自由を損なう限りにおいてこれを不当なこととして排除しなければならない」(n.2492).

上記の教えに基づいて今日の日本社会の状況を見るとき、特に気になる二つのことがある。一つは、プライバシーの尊重が異常なまでに重視されていることである。特に、私的情報の乱用を防止するために制定された「個人情報保護法」が誤解されて、共通善や個人の保護を敬遠して市民の孤立化を助長する傾向が強くなっているように思う。たとえば、プライバシーの問題を重視するという理由で、必要な行政サービスまでがままならぬ状況が報じられたことがある。その意味で、プライバシーの尊重はあくまでも兄弟愛を実践するためであり、共通善のために必要となれば、個人の名誉を厳密に守りながら、個人情報を兄弟愛につなげていく努力が必要である。

もう一つは、いわゆる「ヘイト・スピーチ」(憎悪表現)の氾濫である。2009年12月の京都朝鮮第一初級学校の門前に押し掛けた「在日特権を許さない市民の会」が、大音響マイクを使ってのヘイト・スピーチがある。その後も、例えば東京新大久保、鶴橋などにおける排外主義デモに代表される人種主義的ヘイト・スピーチが有名であるが、身近なメディアを使った友達に対する悪口雑言を繰り返すヘイト・スピーチも、人々の間に分裂をもたらし、悪くすれば自殺に追いやる悪質な行為である。従来も事実とは言え個人の名誉を傷つける「そしり」の罪が指摘されてきたことは周知の通りだが、いずれも隣人愛にもとる犯罪としてこれを排除する努力が必要である。

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註1.“秘密を漏らす者は信用を失い、もはや心の友を見出すことはない”(シラ書27,16)。“隣人に訴え事があるなら、その人と争え。その秘密を他人に漏らしてはならない。さもないと、それを聞いた者は、お前を悪しざまに言い、お前の汚名は消えることがない”(箴言25,9-10)。



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