核兵器廃絶と貧困の終焉

核兵器廃絶と貧困の終焉

カテゴリー カトリック時評 公開 [2009/05/15/ 18:05]

オバマ米大統領はさる4月5日、核政策演説をプラハで行い、「核兵器を使用した唯一の国として米国は道義的責任がある」と、「核のない世界」の追求を宣言した。アメリカがその気になったのは大きい。今のところ、ロシアや中国など核保有国は概して反応を示していないが、核論議はすでに活発化している。

唯一の核被爆国であるわが国においては、米国の核の傘の中でわが国の防衛を考えているせいか、その反応は複雑である。それでも、日本政府はオバマ大統領の方針に敏感に反応して、たとえば、中曽根外相は先日東京都内で演説し、来年早期に核軍縮に関する国際会議を国内で開く考えを表明した。また、新聞報道によれば、麻生首相の親書を携えて訪米した安部晋三元首相が米側に大統領の被爆地訪問を打診したという。被爆地広島や長崎はこれを歓迎している。

カトリック教会は早くから全面戦争を否定し、核兵器廃絶、軍備縮小を主張してきた。1981年、広島を訪れた教皇ヨハネ・パウロ2世は「平和アピール」の中で言われた。「核兵器は依然として製造され、実験され、配備され続けています。…この時点で、紛争解決の手段としての戦争は許されるべきではないという固い決意をしようではりませんか。人類同胞に向かって、軍備縮小とすべての核兵器の廃棄とを約束しようではありませんか」。この訴えは今もそのまま通用する。

これより先、第2バチカン公会議(1962-65)は、すでに近代の諸教皇が宣言した全面戦争の断罪を認め、次のように宣言する。「都市全体または広い地域をその住民とともに無差別に破壊することに向けられた戦争行為はすべて、神と人間自身に対する犯罪であり、ためらうことなく固く禁止すべきである」(現代世界憲章80)。

教会はまた、軍備競争に使われる巨大な費用を世界の貧困解消に回すよう求めている。「多くの国が行っている軍備拡張は、平和を確保する安全な道でもなく、それから生ずるいわゆる力の均衡も、確実で真実な平和ではないことを人々は確信すべきである。それは戦争の原因を取り除くどころか、かえって徐々に増大させる。絶えず新兵器を準備するために巨大な富が消費されているのに、全世界の現代の悲惨を救うための十分な対策を講じることができないでいる」(同上81)。

そこでわたしは、ここで次の三点を強調しておく。

―核兵器の縮小、そして廃絶は人類の悲願である。核兵器の抑止力をさまざまに活用したいという権力者たちもいるが、本気で核兵器を使用しようとするものはあるまい。核兵器は相手ばかりでなく自分をも滅ぼす危険があるからである。そこで、わたしたちは種々の機会をとらえて、繰り返し、辛抱強く核廃絶を求めて声を上げなければならない。

―核兵器使用にはいかなる口実も通用しない。米国の保守派は、広島、長崎の原爆投下は数百万の米兵のいのちを救うために必要であったと正当化しているが、米兵の命を救うための方策は和平工作などいくらでもあったはずだ。原爆がなくても、日本の敗戦は目に見えていたのである。それに、米兵の命も広島・長崎の市民の命も同じ尊厳と権利を持っていたはずである。なぜ米兵の命を救うために市民を犠牲にしなければならないのか。

―軍備拡張の費用を貧困の克服に回さなければならない。貧困の撲滅は、人類は世界の富を共有する一つの家族であるという真理に基づく正義と愛の要求であるが、周知のとおり、軍拡の予算を世界の貧困対策に回せば、貧困の克服は容易に実現できる。わたしは最近、開発経済学の第一人者ジェフリー・サックス教授の『貧困の終焉』(早川書房/2008)を読んだが、今日の貧困対策の発展は目覚ましく、的確にその処方箋を示すことができるようになっているのを知って驚いた。彼は、国際援助が得られれば、2025年までに、自力では貧困から抜け出せない、いわゆる「極度の貧困」(約10億人が対象)を解消できると断言している。これと併せて、国連に参加する191カ国が全員一致で2002年2月に採択・署名した国連ミレニアム宣言を想起しなければならない。その中には、「2015年までに1日1ドル未満で生活する人口を半減させる」という開発目標が掲げられている。ここでも、正義の要求にこたえるべき政治の責任は重い。



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