中東地域のカトリック教会

糸永真一司教のカトリック時評 > カトリック時評 > 中東地域のカトリック教会

中東地域のカトリック教会

カテゴリー カトリック時評 公開 [2010/07/01/ 00:00]

中東はキリスト教発祥の地であるが、パレスチナ問題やアフガニスタン・イラク戦争と絡んでユダヤ教やイスラムのことが報じられることはあるが、キリスト教はほとんど話題にならない。ところが、このほど教皇のキプロス訪問によって、中東地域にあるカトリック教会がクローズアップされた。

教皇ベネディクト16世は、さる6月4日から6日まで、教皇としては初めてキプロスを訪問し、少数派であるカトリック信者たちを励ますと同時に、東方正教会との対話を促進するよう求めた。キプロス島は異邦人の使徒パウロがバルナバとともに、西暦46年の第一回宣教の旅において最初に訪問したゆかりの土地であり、伝道旅行の初穂として総督セルギオ・パウロが洗礼を受けたという、歴史的な島であるが、現在は、1974年の紛争からギリシャ系住民の南とトルコ系住民の北の二国に分裂しており、南北平和と一致が求められている島である。教皇のキプロス訪問の目的について、キリスト教一致促進評議会議長ヴァルク・カスパー枢機卿は、「正教側との対話促進である」と語った。

教皇は同時に、ニコシア競技場での訪問最後のミサにおいて、中東特別シノドス(代表司教会議)の「討議要綱」を、「エジプトからイランまでの諸国に分布するラテン典礼やマロン、メルキト、アルメニア、コプト、カルデア、アッシリアの各典礼カトリック教会の代表者たちに、直接手渡した」(カトリック新聞)。

このシノドスについて教皇は話された。「来る10月、ローマで開かれる中東のためのシノドスのテーマは、『中東におけるカトリック教会の交わりと証し』です。事実、この重要なイベントは、この地域の多様な典礼のカトリック・キリスト者の集会であると同時に、将来に向けての対話と勇気の新たな探求でもあります。従って、この集会は全教会の祈りの中で、また、中東に特別の関心を集中する中で行われます。なぜなら、まさにこの地において神はわたしたちの先祖たちが信仰によってご自分を知るようになさったからです。しかしながら、この集会は、今日もなお人々を苦しめている困難と抗争を乗り越えて正義に基づく平和を見出すことができるよう願っている全世界の、そして特に公共生活の活動家たちの関心を集めることになるでしょう」(ヴァチカン広場における6月9日の一般謁見における教皇の発言)。

以上からもわかる通り、中東における平和と協調を実現するために、キリスト教の果たすべき役割は極めて重要である。特にパレスチア問題の中心にいるユダヤ教およびこの地域における絶対多数派を占めるイスラムとの対話と協調は、中東和平にとって決定的な意味をもつだろう。なぜなら、一つには戦争やテロは絶対に平和を約束しないからであり、二つには、キリストの「平和の福音」は中東和平への唯一の鍵だからである。

所詮、戦争もテロも目的は人殺しであり、際限なき報復合戦を招き、分裂と抗争の度を深めるだけである。パレスチナ問題がその明らかな証拠であり、イラクやアフガンでもその様相は変わらない。あの有名なペシャワール会の中村哲氏はアフガンの事情について書いている。「米軍が来たために、さらに紛争が拡大するという悪循環が各地で起こり、治安は悪化しつつあるのです。これが現在の状況です」(『アフガニスタンで考える』)。長年アフガニスタンの現場で奉仕活動に従事してきた人の発言だけに重みがある。戦争やテロでは平和は期待できないのである。

他方、中東地域での恒久的な平和は、「人間となった神の愛」キリストのプレゼンス(現存)なくしては実現しないだろう。愛にはおよそ二つの側面がある。一つはゆるしであり、もう一つは互いの区別を超えて一つにすることである。キリストの愛はまさにこの両面を完璧に実現した。つまり、十字架の受難と死によって人類の罪のゆるしへの道を開き、復活によって「散らばっていた神の子らを一つ」(ヨハネ11,52)にし、正義と愛に満ちた神の国を実現したのである。聖パウロは言う。「実に、キリストご自身こそ、わたしたちの平和であり、互いに離れていた二つのものを、敵意を取り除いて、一つにした方です」(エフェゾ2,14)。従って、中東和平への対話と協調の中に、キリストの愛を持ち込むことがぜひとも必要なのであり、その役割を果たすのが教会である。

中東地域のカトリック教会は極めて少数派であり、様々な仕方でいじめられても来た。しかし、たとえ少数であってもその平和への使命は免除されない。平和の鍵、すなわち、分裂している人びとを一つにする真の愛、力ある愛を持ち込めるのは教会だけだからである。来る中東特別シノドスは、その小さなカトリック教会が改めて立ち上がり、平和への対話と協力に新たな一歩を記すよい機会である。教皇は中東の小さなキリスト群れに対して祈りの支援を約束すると同時に、世界の教会が中東の教会を物心両面においてこれを支えるよう期待しておられる。そしてこの訴えは、世界中のすべての善意の人々への期待でもある。



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