二人の元教皇の列聖について

糸永真一司教のカトリック時評 > カトリック時評 > 二人の元教皇の列聖について

二人の元教皇の列聖について

カテゴリー カトリック時評 公開 [2014/05/10/ 00:00]

カトリック教会は、厳しく慎重な調査ののち、英雄的な仕方でキリスト教信仰を生き抜いた人を、模範として聖人の列に加えて顕彰するが、去る4月27日、教皇フランシスコは二人の元教皇を聖人の位に挙げると宣言した。すなわち、教皇ヨハネ23世(1881-1963)とヨハネ・パウロⅡ世(1920-2005)である。

列聖(Canonisatio)とは、まず、キリスト教信仰を完全に生きて、今は天国にあることの証明である。列聖の条件とされる二つの奇跡はその証拠とされる。次に、現世に生きるキリスト者の模範として公に顕彰することである。さらに、全世界において祭壇に祀り、われわれのために取り次ぎを願うことを許すことである。

ところで、今回の二人の教皇の列聖の意義については、さまざまな見方ふぁあり得る。実際、すでに教会内外から多様な感慨が語られている。そこで、わたしもまた、一つの感想を述べたい。

まず、お二人の新聖人は、現代を生きた聖人でることである。それは、新聖人がわれわれと同時代人であるというばかりでなく、現代のという、いわば反キリスト教的な無神論が謳歌される時代に、キリスト教信仰を立派に生き抜かれたということを意味する。周知の通り、近代合理主義が勃興して以来、神を拒否し、神から独立した人間の知恵と力を過信して、地上の楽園を自然科学とその技術によって確立することができるという進歩主義信仰の時代である。こうして、例えばキリスト教文化華やかなりし欧米は、今や神なき世俗主義社会へと変貌してしまったのである。

そういう時代に、現代の教皇たちは世界の教会を指導する前に、自らキリスト教信仰を模範的に生きていたのである。その中の二人が今回列聖されたが、その他にも、第二次大戦長の教会を指導したピオ12世教皇や第2バチカン公会議をヨハネ23世から引き継いで

完成したパウロ6世教皇も、すでに列福、列聖調査中である。こうした事実は、歴代教皇の信仰の偉大さもさることながら、何よりも主キリストがお約束通り、今も聖霊とともに教会に留まって、人間の聖化の事業を続けていて下さることの証明である。だから、二人の新聖人に対する崇敬の念を高めると同時に、「聖なる教会」への信仰と信頼を新たにすることが教会の願いである。

次に、今回列聖された二人の教皇に共通の意義は、第2バチカン公会議に直接に、そして深くかかわっておられることである。周知の通り。第2バチカン公会議は教会の刷新と現代化を実現した歴史的な大事業であり、物質化し世俗化した現代において、キリスト教とは何か、カトリック教会とは何かを問い直し、それを明らかにして教会の使命を、聖ヨハネ・パウロⅡ世教皇の言葉を借りれば、「新しい福音宣教」の在り方として高く掲げた公会議であった。

まず、聖ヨハネ23世教皇は、聖霊の勧めに従って、公会議を召集された。それは世界中を驚かせる催事であったが、今から考えると、ある意味で歩みに取り残されそうになった教会の矛盾を解決手段として、行われなければならない「刷新と現代化」であったということができるよう。

一方、聖ヨハネ・パウロⅡ世教皇は、新進気鋭の司教として公会議に参加し、公会議文章の作成にも直接参加するとともに、教皇に選ばれたのちには、公会議に教えと方針の実施に指導的な役割を発揮されたのであった。彼の教皇名である「ヨハネ・パウロ」は、公会議を召集したヨハネ23世教皇と、彼の亡き後、公会議を指導し完成したパウロ6世教皇の二人の教皇名を引き継ぐことを意味していた。聖ヨハネ・パウロⅡ世は26年に及ぶ長い教皇在位の間、多くの回勅や使徒的勧告を発布したが、いずれの文書も、第2バチカン公会議の教えに基づき、またその教えを引用しながら解き明かされた。その教皇職は第2バチカン公会議の実施に捧げられたものといっても過言ではない。

したがって、第2バチカン公会議に直接に深くかかわった二人の教皇の列聖は、この公会議の重要性をあらためて確認すると同時に、公会議がまさに聖霊の導きによるものとして神の承認をあらためて得られたと考えてもよいのではないか。第2バチカン公会議からすでに半世紀の年月を経過しているが、あらゆる面から見て、公会議の教えの理解は十分ではなく、種々の誤解や反論もないとは言えない。二人の教皇の列聖を、あらためて公会議の意義を問い直し、その完璧な実践に取り組む機会にしなければならない。公会議の教えを学ぶための参考書も沢山ある。公会議の公文書をはじめ、歴代教皇の回勅や使徒的勧告、司牧指針、教皇の指導下に発行された教皇庁の諸文書、なかでも『カトリック教会のカテキズム』と『新教会法典』がある。